SPECIALIST COLUMN 医師ら専門家のスキンケア指導方法

アトピー性皮膚炎の方の“保湿”について~どうして保湿が大切なのでしょう~

〈アトピー性皮膚炎の症状〉
アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が長期にわたり良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患です。幼少時期からアトピー性皮膚炎を発症し「痒みを感じない日はなかった」という方がいらっしゃったり、「症状がずっと悪いわけではないけれど季節やストレスなどで痒みが悪化して困ることが多い」という方もいらっしゃると思います。また、皮膚炎が誘発される部分も、「顔面、特に眼瞼周囲がいつも赤く痒い、」とか、「首や肘、膝がいつも乾燥していて痒い」など、重症度はもとより皮疹の範囲も、患者さんごとにさまざまだと思います。

〈皮膚のバリア機能〉
通常、私達の皮膚は皮脂や水分が保たれていることでダニやほこり、花粉など、俗に言うアレルゲンが皮膚に入り込まないように守られています。一方、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は乾燥する傾向があり、同時に皮膚の下で免疫細胞がアレルギー反応を起こそうといつも待ち構えているという特徴があります。乾燥して皮膚のバリア機能が下がるので、皮膚の外からアレルゲンや刺激が入りやすくなっており、それらと皮膚の下で待ち構えている免疫細胞とが結びついて、さらにアレルギーとしての炎症を悪化させます。同時に、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚ではかゆみを感じる神経が皮膚の表面まで伸びていることが明らかとなっており、かゆみを感じやすくなっています。「痒いために掻く、そのためにさらにバリア機能が低下し、さらに痒い!」といった状態は重症、軽症に関わらず、部位や体調、ストレス、季節の変化などにより、どの患者さんにも起こります。

〈保湿の大切さ〉
痒みが強く、湿疹が悪化している時には皮膚科医の指導の元、治療を進めた方がよいのですが、湿疹が悪化している時も、安定している時も、患者さん自身が「どのような習慣を行っておけばよいか」という点では、やはり『保湿を丁寧にしっかりと行うこと』が勧められます。かかりつけの先生からも保湿剤は処方されますが、大人でも子供でも、それだけでは足りない場合が少なくありません。またご自身が心地よく感じる保湿剤を用いて、前向きな気持ちで塗布していくことがとても大切です。同時に、季節や皮膚の状態によりローション、クリーム、ワセリン基剤など、保湿剤を変えることも皮膚をよい状態に保つためには必要なことです。

外用薬にしても、保湿剤にしても、塗り方次第で皮膚の状態が劇的に変わることをよく経験します。私は、患者さんに「ぜひ塗布して気持ちがよいと感じることができる保湿剤を探してください。その際は、試供品をいただいて、いろいろと試してくださいね」とお話します。

〈最後に〉
アトピー性皮膚炎の患者さんは軽症から重症の方まで、1人として同じ状態の方はいらっしゃいません。一人ひとりに皮膚に対する悩みがあり、その気持ちに寄り添うことが皮膚科医の役割なのではないかと思い、診療を行っています。「保湿剤」はステロイド外用薬のように劇的な変化はもたらしませんが、日常的に患者さんの皮膚をサポートしてくれる点においては大きな力を発揮します。クリニックで処方される保湿剤と共に、ご自身に合った保湿剤に出会い、アトピー性皮膚炎とうまくお付き合いできるようになっていただけたらと思います。

矢上 晶子 先生この記事を書いた人

藤田医科大学 ばんたね病院 総合アレルギー科 教授
アレルギー専門医・指導医(日本アレルギー学会)
皮膚科専門医・指導医(日本皮膚科学会)
〈message〉
患者さんが「当科を受診してよかった」、そして、ご紹介くださる先生方が「患者さんを紹介してよかった」と思っていただける診療を常に目指します。アレルギーでお困りでしたら、ぜひ一度受診してください。

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